人気急上昇中の登山YouTuberこうたろさんの人気動画といえばベースレイヤーについて語ったシリーズ。乾きやすさを部屋干しで比較したり、登山中に複数社のベースレイヤーを実際にレビューしたりと、見る人を飽きさせません。
第3回目は「登山の成功と失敗を分けるベースレイヤー」についてインタビュー。この会のためにこうたろさんが持参してくれたベースレイヤーは何と23点、驚くことにその一つ一つの機能は違っているといいます。なぜこれほどまでにベースレイヤーを大切にしているのか?一見どれも同じに見えるベースレイヤーの違いに迫ります。
UNIQLOのヒートテックで大失敗!

TAL:こうたろさんがベースレイヤーに興味を持つようになったきっかけは?
こうたろ:初心者はユニクロのヒートテックがあれば大丈夫やと思うことが多いですが、初心者時代の僕もそうでした。
ヒートテックは化繊も入っているけど、レーヨンが20%以上入っています。レーヨンはめちゃくちゃ汗を吸って全然乾かない素材なんですよ。ほぼ綿と同じです。
僕も動画で「ヒートテックで山を登ってみた」企画をしたことがありましたが、汗でベッチャベチャで気持ち悪かったですが、その甲斐あって再生回数は伸びましたね。
TAL:ヒートテックは汗をかいたら乾かないのですね。知らなかったです。
こうたろ:僕が登山を始めたのは2012年の真冬でした。当時はネットに登山の情報があまりなくて。
インナーにヒートテックを着て、その上に綿のスウェット(綿のトレーナー)を着ました。綿のトレーナーを着たのはカレッジ系というか、体育会系の人が着ているからスポーツ用だと思っていたからです。でもね、綿は全然乾かないから登山にはNGだったんです。
それで、この真冬の登山で休憩をしていたら寒くてブルブル震えるんですよ。登山は立ち止まるとこんなに寒いんだ!と思いながら、汗でビチャビチャになった綿を着ていて・・・(笑)
今考えると完全にNGなんですよ。でもこの時はこれが普通やと思ってて。
TAL:この時にベースレイヤーが大切と気づいたのですか?
こうたろ:この冬はまだ学習していませんでした。ベースレイヤーの大切さに気づいたのは次の夏です。
このMarmot の青いベースレイヤーは僕の初めてのベースレイヤーなのですが、3,800円ぐらいと安かったので買ってみたんです。

着てみたところ、汗がすぐに乾いて驚きました。ここで初めてベースレイヤーは大事なんやな〜っ!て気づいたんですね。
上着は初心者の時でもGORE-TEXとかフリースとか、カッコいいものをと思っていましたが、肌着が8,000円とか10,000円とかってありえへん!絶対もったいないやろ!と思っていました。
その肌着が実はいっちばん大事だった。1番肌に近いベースレイヤーをおろそかにしていた結果、1番苦しい登山になっていたんです。
初めての冬用はパタゴニア・キャプリーン3
TAL:すぐに冬用のベースレイヤーも買ってみましたか?
こうたろ:夏にベースレイヤーの効果を感じてから、冬用も高いけど、これは投資なんやろうと思って買ってみました。初めての冬用の化繊はパタゴニアのキャプリーン3です。素材はダブル編みのポーラテック・パワー・ドライ・ポリエステルです。
使用感は内側が温かい起毛仕上げで程よく暖かく寒い秋の日から真冬にかけて着用しています。残念なところは着丈が短いため、登山中に背中が出てしまい、ひんやりする所ですね。
この悩みは現行モデルのキャプリーンミッドウェイトでは解消されています。私のは昔のモデルで、用途別に1〜4までの種類がありました。最近のキャプリーンはデイリー・ライトウエイト・ミッドウエイトに表記が変わっています。


そこからは季節に合ったベースレイヤーを揃えだしました。やっぱり季節に合ったベースレイヤーを着ていくと心地良いですよ!
TAL:それでいまは27点持っているわけなんですね。
こうたろ:ベースレイヤーは1番肌に近いので、失敗したらこれ以上脱げません。その登山の成功も失敗も全てベースレイヤーにかかっているので、今でも何を着ていくか悩みますよ。
TAL:最近でも失敗することがあるのですか?
こうたろ:ありますよ失敗談。2020年12月初旬の金剛山の登山で。気温をチェックして、最も温かい化繊ベースレイヤーであるパタゴニアキャプリーンのミッドウエイトを着ていったら、クソ暑すぎて。
たまたまその日が暖かかったのかもしれないけど、ベースレイヤーはそれ以上脱げないのでその日は暑すぎて大変でした。27点も持っているのに失敗したらさすがにストレスを感じました。
TAL:なるほど。山や季節ごとにどのベースレイヤーを着ていくべきかというのはノウハウなのですね!
こうたろ:そうです。山や季節だけでなく、その日の登山スタイルによっても違います。ずっと行動しっぱなしの場合やスピードを出す登山では、汗の量が多く、早く乾いてほしいので化繊素材が最適です。
逆に、ゆっくりランチを食べたり休憩が多くなりそうな時は、休憩時に汗冷えしにくいためウールがぴったりですね。
登山ウエアのレイヤリングとは?
TAL:登山ウエアのレイヤリングには大きく3つの層がありますが、先程こうたろさんがベースレイヤーの大切さに気づいたエピソードをうかがいました。
レイヤリングとは? 登山ウエアにはレイヤリング(重ね着)という考え方があり、3つの組み合わせで気温や体温の変化に対応する。最も基本的な3層がベースレイヤー・ミドルレイヤー・アウターレイヤー。 ベースレイヤー:肌に直接着る。汗を吸収し外へ逃がす。肌を乾いた状態に保ち、体温を維持するのが主な役割。 ミドルレイヤー:行動中に着用する。ベースレイヤーの上に着る。汗を外に逃がすこと、保温が主な役割。 アウターレイヤー:一番外側に着て、雨、雪、風から身体を守る。 |
こうたろ:ベースレイヤーは1番肌に近いウエアなので、失敗したら登山中がいかに不快でも、それ以上脱げません。その登山の成功も失敗も全てベースレイヤーにかかっています。
TAL:ぜひベースレイヤーについて詳しく教えてください。
こうたろ:ベースレイヤーには大きく3つの種類があります。ウール・化繊・ミックス(ハイブリッド)です。

1枚で何役も。ウールのベースレイヤー
TAL:まずはウールのベースレイヤーについて教えてください。
こうたろ:ウール最大の特徴は、素材に温度調節作用があることです。暑いと涼しくなり、寒いと暖かくなる効果があるから、天然のクーラーと言われています。
ウールはひつじの毛のことですが。ひつじって、モワモワしているのに夏でも平気ですよね。それは、素材に温度調節機能があるからなんですよ。
この温度調節機能のおかげで、ウールのベースレイヤーを1枚持っていれば1年中使い回せます。春も夏も1枚でOKで、低山なら真冬も使えます。真夏の高山は高度が高いので秋みたいなものだからここもOK。雨後は気温が下がるので、僕は降りそうな時はウールを着ていくことが多いですね。
このように1枚何役もしてくれるので、初心者には特におすすめですよ。ウールのベースレイヤーを持っていれば、あとは真夏用に化繊のものを1枚の合計2枚を持っていれば、一般的な登山なら1年中楽しめます。
ウールは抗菌作用もあるのでニオイがつきにくいです。6泊ぐらいする長期縦走ではこれ1枚ずっと着ている人もいるほどです。汗をめっちゃかきますけど、これ1枚。
僕は1枚で6泊は嫌なので、最低2枚は持っていきます。それぞれ行動着と寝間着として使い、最終日は寝間着で帰ります。
TAL:ウールは洗濯が難しいイメージがあるのですが・・・
こうたろ:そうですね。僕はウールはウール用の洗剤で押し洗いをしています。マメでしょう(笑)ショップの店員さんに「そこまでしているの?」って驚かれますが、この方が長持ちする感じがあるので、やっちゃいますね。
TAL:愛ですね〜!
TAL:こうたろさんのウールのお気に入りは?
ウールのベースレイヤーには2大ブランドがあって、アイスブレーカーとスマートウールです。僕の1番はそのアイスブレーカー。
これがIcebreaker (アイスブレーカー)です。

ニュージーランド産のメリノウールで作られていて、表面がとてもサラサラしていますよ。

そしてこれがSmartWool (スマートウール)です。

これもメリノウールを使用していて、着心地はすごくいいですね。アイスブレーカーに比べ、若干着丈が短いので、寝る時に背中が出ます。なので行動用として使っています。

ここまでが2大ベースレイヤーでした。その他に持参したウールはこのモンベルです。ibex(アイベックス)も持っているのですが、持ってくるのを忘れてしまいました。
汗が超速で乾く化繊ベースレイヤー
TAL:次は化繊について教えてください。
こうたろ:化繊の1番のメリットは速乾性です。汗がすぐに乾きます。僕が最初に買ったベースレイヤーはMARMOTの化繊でした。8年前のことです。当時は初心者だったので、山には綿を着ていくのだろうと思っていました。
このMARMOTを着て初めて登った登山では、すぐに汗が乾くから感動しました。「化繊という手があるのか〜!」と。今でも真夏にはこれを使っています。

そんな化繊の最大のデメリットは行動していると臭くなること。とりわけ昔は臭かったんですよ。でもね、最近は銀イオンを練り込んだものがあって、これは臭いません!
これはパタゴニアのキャプリーンなのですが。タニタのニオイチェッカーで登山をしながら測ってみたんですよ。5〜6泊してもほぼ臭いはゼロでした。


モンベルの銀イオンタイプもほぼ臭いませんでした。一時的に臭いレベルが3に上ったことがあるのですが、銀イオンがニオイのもとを退治してくれたようで、しばらくするとゼロに戻りましたね。

あと化繊は洗濯が簡単です。洗濯ネットに入れて洗濯機で洗うだけでOKです。
というわけで、僕の登山に持っていくベースレイヤーの組み合わせの一つには、消臭効果のある化繊を行動着にして、ウールを寝間着にしているパターンがありますね。
ウールと化繊の良いとこ取り、ハイブリッド
TAL:最後にミックス素材について教えてください。
こうたろ:最近のベースレイヤーの傾向なのですが。メーカーはウール100%を出さなくなってきていて、かわりにハイブリッド(ミックス)が発売されるようになってきました。
ウール100%は温度調節機能がある反面、耐久性は低めです。このウールにナイロンやポリエステルを加えると耐久性が上がったり、乾きやすくなったりします。そんなわけで、ポリエステルやナイロン混のものが多くなっています。
化繊が20%でも混ざっているとスルスル・サラサラしていて気持ちがいいですし、長持ちします。

ベースレイヤー選びで重要な「丈」
TAL:素材以外にベースレイヤー選びで大切なことはありますか?
こうたろ:丈ですね。着丈はベースレイヤーにとって大事です。丈が短いものは行動着としては問題ありません。でも寝ている時に腰がはみ出たりするんですよね。
それで山小屋やテントで寝ていると安眠を妨害される感じで少しイラッとします。だから寝る時は丈が長いものを着て寝ます。
TAL:分かります。寝ている時に腰やお腹は隠しておきたいです。
山の種類と季節別、ベースレイヤーまとめ

TAL:最後に、こうたろさんが実際に着ていくベースレイヤーを山と季節ごとに教えてください。
※ウールについている数字は平米(m²)あたりの重量で生地の厚さを表しています。
低山(〜1,000m 、里山) 春:ウール150 春秋用の化繊 夏:夏用の薄手の化繊 秋:ウール150 春秋用の化繊 冬:ウール150〜180 厚手の化繊 |
中山(1,000〜2,000m) 春:ウール150 春秋用の化繊 夏:夏用の薄手の化繊もしくは春秋用の化繊 ウール130 秋:ウール150〜180 春秋用の化繊 冬:厚手の化繊 ウール180 |
高山 (2,000〜3,000m、アルプスなど) 春:登りません 夏:行動中は化繊 泊まりの休憩中などはウール150〜180 秋:行動中は化繊 泊まりの休憩中などはウール150〜180 冬:登りません |
こうたろ:僕の1番お気に入りのウールはIcebreaker (アイスブレーカー)の150で、化繊はパタゴニア・キャプリーン・ライトウエイトです。
TAL:初心者におすすめと考えているものはありますか?
こうたろ:初心者がお金をかけずに良いものを買って登山をするなら、ウールの150がいいと思います。150が1番薄いウールで、これを持っていれば1年中いけますよ。
TAL:初心者向けに1枚あげるとしたら?
こうたろ:初心者におすすめなのはモンベルのハイブリッドです。旧モデルはウール100%やったんですけど、新モデルはハイブリッドで、ポリエステルが15%入っているんですよ。ポリエステル15%入ることで、保温力は少し下がりますが、伸縮性がアップし、乾きやすさもアップします。

普通ウールは1万円ぐらいするんですが、これは6700円。
TAL:それは相対的に安いですね。なぜなのだろう・・・
こうたろ:モンベルはセールをしません。いつもプロパーで売っています。企業努力というか、企業ポリシーで安く提供したいという思いがある。あと自社素材を使っているから安くなります。
TAL:なるほど〜。これを聞くとモンベルを買えばいいなという感じですね。
こうたろ:登山をこれから続けるかどうかまだ分からない方や初心者の方が買うのにおすすめは、コスパ最強のモンベルですね。

TAL:ありがとうございます。まずはウール150を1枚ですね。とても参考になりました!

こうたろさんインタビュー最終回「登山YouTuberこうたろさんをTALがファッションチェック!」につづく

チャンネル登録者数1.22万人 (2021年4月現在)
オリジナルグッズサイト
こうたろ山荘 https://kotarokotaro.base.shop/
登山歴9年 参考歴は300回ほどの中級登山者です。
毎年北アルプスにソロテント泊縦走に行ってます!去年はジャンダルムを制覇!
ボルダリングも趣味としてボルダリング歴6年 ジム3級 外岩最高グレード1級 年数の割には成長しません(笑)
登山やキャンプ、ボルダリングなどの「人」に注目した動画をお送りするチャンネルです。
かわいい人、かっこいい人、面白そうな人など、突撃インタビューしてアウトドアのお役立ち情報などお送りしております。
また、僕のアウトドアの経験談や、登山の経験で感じたアイテムレビュー(ウェア類は100着以上持ってます!)なども紹介!